header
わさび(山葵)に含まれる主な成分
材料
わさびは、和食の代表ともいえる「刺身」に欠かせない香辛料のひとつです。特有の辛みや香り成分は揮発性のからし油(イソチオシアネート)類で、ビタミンCやカリウムを豊富に含んでいます。従来よりわさびには食欲増進や抗菌、ビタミンB1の合成促進などの働きが知られていましたが、昨今の研究により、辛みや香り成分の持つ様ざまな効能(新興細菌に対する抗菌、発がん抑制、血栓形成抑制、骨粗鬆症抑制など)が発見され発表されています。

約90%も含まれるアリルイソチオシアネート
わさび特有の辛みや香り成分のもとは、からし油配糖体シニグリンです。すりおろすと細胞膜が破れ、シニグリンはわさびに存在する酵素ミロシナーゼによって加水分解され、辛み成分のアリルイソチオシアネートなど数種の物質に分かれ独特のツーンとした辛みや香りを生じます。このイソチオシアネート類がわさびに含まれていることを最初に報告したのは静岡大学の衛藤英男教授と伊奈和夫名誉教授です。アリルイソチオシアネートはわさびのからし油の内、約90%と多量を占める成分で、生わさび100g当たり約0.3g含まれているといわれています。

強力な殺菌作用や抗カビ作用、殺虫作用も高い
アリルイソチオシアネートには、強力な殺菌作用や抗カビ作用があることが報告されています。病原性大腸菌O‐157、黄色ブドウ球菌、腸炎ビブリオ菌などの食中毒菌に対する抗菌効果に優れ、これらの菌はわさびおろしの中で12時間ほどで死滅すると報告されています。また、アリルイソチオシアネートは大衆魚介類に多く寄生する線虫幼虫の活動を抑制する働きに優れており、サバなどに多い寄生虫アニサキスを生わさびのすりおろし汁と食塩水の混合液に浸けると、約7時間で活動が停止するといわれています。

レモン汁を加えると、殺菌力が倍増する
わさびにレモン汁を1滴加えると、アリルイソチオシアネートの量が急増し、殺菌力が倍増するという報告もあります。これはレモン汁に豊富に含まれるビタミンCが酵素の働きを活性化するためです。また、わさびは古来より殺菌・抗菌作用が知られており、食中毒予防として弁当箱のフタにわさびを塗る(根わさびの切り口で拭く)などのひと手間で弁当の腐敗を防ぐ知恵が伝承されています。

過剰な活性酸素の産生を抑え、抗がん作用に働く
辛み成分はがん誘発に働く焼け焦げ物質の分解に働くと報告されています。ヒトのDNAは誤った情報が伝達されると遺伝子の変異に伴う疾病、例えばがん細胞を発生しますが、わさびには過剰な活性酸素の産生を抑え、がんなどの各種疾病の予防や緩和が期待されています。ヒト胃がん患者のリンパ節転移由来細胞の増殖を著しく抑制する、さらにマウスの足裏にがん細胞を移植し、辛み成分を投与すると肺や肝臓への転移を抑制するという実験結果も報告されています。また、わさびと茶の相乗効果の研究(静岡県立大学・木苗教授)では、わさびと茶を一緒に取ることでがんに対する予防効果が高まることが有望視されています。

胃・十二指腸潰瘍を予防し、食欲増進に働く
わさびの香りや辛み成分には胃酸の過剰な分泌を調整し、胃潰瘍や十二指腸潰瘍を防ぐ働きがあります。適度な刺激作用(辛みや色彩)が食欲増進に働き、唾液の分泌とジアスターゼの活性化を増加させるため、消化吸収が促進されます。

特有のツーンとした香りが血栓予防に働く
わさび特有の香りには血液中の血小板の凝集を抑え、血液凝固を防ぐ働きがあります。この報告は森光康次郎助教授(お茶の水女子大)らの研究によるもので、「わさびには同じアブラナ科野菜であるにんにくやたまねぎに匹敵する血小板凝集阻害活性がある」と発表しています。ヒトは老化とともに血栓ができやすい傾向を持っており、その対策として日常的にアブラナ科の野菜を取ることで、血液がサラサラになり、動脈硬化や心疾患などの予防に有効に働くとされています。わさび特有の香りは西洋わさび(ホースラディッシュ)や粉わさびには存在しないので、血液サラサラ効果を期待するなら本わさびを摂取するとよいでしょう。日本が欧米に比べて血栓症が少ないのは、わさび根茎をすりおろして香辛料として食するという食文化が影響しているとの指摘もあります。また、血液サラサラ効果は酒粕の酵素と一緒になることでより高まるといわれており、わさび漬けは血栓予防に有効な食べ物です。

辛みや香り成分が認知症機能改善に働く
わさびの辛みや香り成分には脳細胞の再生を促し記憶力や学習能力を活性化させる働きのあることが、名古屋市立大学院医学研究科の岡嶋・原田両氏の実験によって報告されています。同氏らはヒトの胃や腸の知覚神経が唐辛子などの辛みや熱さなどの刺激を受けると、全身の細胞の増殖を促進するたんぱく質「インスリン様成長因子‐I(IGF‐1)」が多く作られ、認知機能が改善されることを解明しており、同様の効果がわさびにもあることを突き止めました。

骨粗鬆症予防に働く
わさびの効能として骨増強作用が挙げられます。2002年、静岡県静岡工業技術センターと静岡県立大学が沢わさびの葉柄から抗骨粗鬆症作用を発揮する骨量増進組成物の抽出に成功しました。マウスの実験ではマウス頭頂骨の骨量増進作用が見られ、わさびは骨粗鬆症に有効と期待されています。

footer